息子がハンバーグを食べたいというと、私は洋食cotocotoさんへ行きます。

覚悟を決めて。

覚悟? それは服が汚れること、そしてこんな日に限って息子は白いTシャツを着ていることに。

かなわない願いなのに、天を仰いで神に願います。

「今日のTシャツは汚さないようにしてください」と。

できれば汚したくない。

まるで日本代表の試合に掲げられるスローガンのように「絶対に汚せない白いTシャツがそこにある!」という気分で試合に、いや、お店に向かいます。

入店。

メニューを開いて親子の攻防が始まります。

「あっ、グラタンがあるよー」(父)→「(首を横にふり)ハンバーグがいい」(息子)
※息子はまだカタカナが読めません

「ハンバーグは今日はないのかもしれないなー(ヒドイ)」(父)→「(周りを見て)あそこにある、大丈夫」(息子)
※息子の大丈夫は十中八九、大丈夫ではない

他のテーブルでハンバーグを食べていた人を見つけてしまったかー。あきらめてハンバーグを注文します。

自分もせっかくだから同じハンバーグにしました。子どもの心をつかんで離さないハンバーグがどれほどおいしいのか、この機会に楽しんでやろうという目論見です。
ついでにチトビアをオンザロックで注文しとくのも忘れません。

ビール到着。ロックアイスに、クラフトビールをゆっくりと注いでいきます。アイスに琥珀色の液体がぶつかり、非常にクリーミーな泡が立ち上ります。ゆっくりゆっくりと丁寧に注いでいくと、次第に泡が落ち着いて、ふわっと鰹節の香りが広がっていきます。

一口飲むと、息子と目があいました。お前だけ「ずるい」と息子は目で訴えます。しょうがないのでカルピスを注文します。

乾杯して仕切り直し。息子が一口飲んだところで、待望のハンバーグが到着。

アップにするとこんな感じ。分かります? デミグラスソースが星空のようにキラキラしてて、ハンバーグがプリッとしてて、ナイフを入れたら肉汁が出てくる。肉汁を閉じ込めた水風船のようになっている膨らみを。生唾を飲みこんでしまいます。

ナイフを入れるとクッションのようになった肉の断面から透明な肉汁が零れ落ちていきます。その透明なうま味と、下で待ち受けてるデミグラスソースがマーブルになっていきます。肉をフォークに刺し、そのマーブルに絡めていく。スポンジから出た肉汁がデミグラスソースを連れてスポンジに戻ってくる瞬間。鮭の遡上を思い出しますね。たくましくなって生まれた川へと帰ってくる肉汁たち(意味不明)。

マーブルを身にまとったハンバーグを口に入れます。

はぁ、これこれ。この味。間違いないデミグラスソースの深い味、肉を焼いた香ばしさ、いろいろな材料が生み出す複雑な甘味。。。。。ごはんがいくらでも食べらえる味。っと今回はチトビアと合うかの検証でした。危ない、なんていいながら、チトビアをマリアージュさせていきます。

デミグラスソースと鰹節。合うのか?という合わないんじゃないか?と思う不安もふっと消えちゃいました。洋と和は喧嘩することなく、口のなかでうまく混ざり合います。邪魔する、喧嘩することなく、それぞれの味わいを引き立てあったり、混ざり合って別のおいしいものへと昇華していきました。そうか、鰹節ってうま味成分。料理のうまみ成分と重なっていくんだな・・・なんて思っていると

息子の手に、デミグラスソースが! そしてその手が、白Tシャツへと!!

「あーーーーー」といいながら、右手をつかみますが、つかみ損ねまして、べったりと白Tシャツにデミグラスソースがべったりと。。。「あーあ、やっぱり」と思っていると、息子がキラキラした目でいうんです。

「ハンバーグ、おいしいね」って。そうか、これだけ夢中になるほどにおいしいなら、Tシャツのひとつやふたつくらい汚してもいいじゃないですかね。ビールでほろ酔いだったのもあるかもしれませんが、Tシャツが汚れることなんて、そんなに気にすることじゃないかったんだなって思いました。大切なのは食事を楽しむことだし、手を汚してでも食べたいものがある幸せかなと。

まぁ、親にとってはおいしいデミグラスソースほど悪魔なものはありませんけどね。おいしくて子どもが喜ぶけれど、汚れてしまう。まさに悪魔のソース。デミグラスソースが透明だったらどんなにいいかと何度思ったことか(笑)。

しょうがない、おいしいんだから。ボクだってパンにソースをつけて最後まで楽しみましたし。

ほら、こんな風に。おいしかったなぁ。メニューを見ていたら、ハンバーグおろしポン酢っていうものを見つけました。おろしポン酢なら、Tシャツは汚さないかも?と一筋の光が差しました。でも、たいてい、このメニューを提案しても、「いやいや父親よわかってないな」と目をしながら、ソースのハンバーグがいい、とおっしゃるんだろうなと思い至りまして、差し込んだ光は雲に隠れてしまいましたとさ。

おしまい。